掃き溜めの落書き

赴くままの連辞

11月下旬:ショー

 漫画とかアニメの設定で、サーカスから逃げてきた動物が登場することがある。遊んでいたところをハンターに捕獲されてサーカス団に加入させられて、調教師がおっかないとかサーカスの激務に耐えられないとかの理由で逃げ出してきたライオンなどの動物である。物語に登場した後サーカスに戻されるのかあるいは主人公のもとで別の生活を営むのかはわからないが、いずれにせよそういう設定が大衆に受け入れられているのは事実だろう。

 イルカとアシカのショーを見る機会があった。飼育員さんと見事な連携を見せてくれて、イルカのジャンプの迫力も凄まじかったし、アシカの鼻先のバランス能力は(初めてちゃんと見た気がする)目を見張るものであった。ショーの終わりにイルカが水槽のこちら側に来てくれて可愛かった。イルカの大きさにもびっくりした。

 ショーは面白かったのだが、後になってふと、あそこにいる動物はこのショーを楽しんでいるのだろうかと疑問に思った。飼育員さんとの掛け合いを心なしか楽しんでいるように見えるのは、自分が人間である影響を多かれ少なかれ受けているだろうし、動物と相互理解的に会話するツールもないから実際のところは推し量ることもできない。よくて人間風情の牽強付会である。

 動物園ないし水族館の動物をどういう気持ちで見ればいいのかわからなくなってしまった。小さいときは狭い場所に閉じ込められてかわいそうとか思っていたとは思うが、今考えるとそれも結局人間基準の価値観を押し付けているだけだし、かといって彼らが満足していると考えるのもエゴだろう。まずこういうことを考えること自体がエゴなのかもしれない。